COLUMN

ウイスキー

スペック

【生産地】 英国スコットランド地方、英国アイルランド地方、アメリカ、カナダ、日本

生命の水

煙の薫りと琥珀色

Highland Single Malt Scotch Whisky

ウイスキーは、原料を糖化させ、発酵させた後に蒸留を行い、木の樽で熟成を行うという手順で造られます。
大麦やライ麦、トウモロコシなどの原料は、まず「浸麦」と呼ばれる吸水が行われ、発芽させられます。
その後、植物を燻した煙で「燻蒸」され、乾燥によって成長が止めらると共に、煙の薫りが付けられます。
ここで燃やされる植物は、アイルランドの原野に堆積しているピート(草炭)が有名です。
このピートなどの薫りが、いわゆるスモーキー・フレーバーとなります。


燻された原料は、粉砕されてお湯に漬けられます。
お湯に漬けられるとすぐに、麦芽(モルト)に含まれる糖化酵素の作用で、澱粉が糖分となる「糖化」が始まります。
糖化が行われた後でウイスキー酵母が加えられて発酵が進み、糖分がアルコールに変わります。


発酵が終わると、蒸留が行われます。
蒸留は、二回か三回行われ、純度の高いスピリッツが精製されます。
このスピリッツに仕込水を加水し、木の樽に充填されて時間をかけて熟成されます。
樽での熟成の際に、木の薫りと色が原酒に移り、独特の風味が加えられて褐色のウイスキーとなります。

密造で洗練された歴史

Highland Whisky Still

ウイスキーの歴史は長く、スコットランドでは早くも12世紀ごろに「ウスケボー」という名で飲まれていたと言われていますが、実際のところははっきりしていません。
15世紀末のスコットランド王室の記録には、麦芽から「アクアヴィテ」を造ったとの記述があり、これが現在のウイスキーのルーツとなります。
このアクアヴィテは、ラテン語で「生命の水」を意味しています。
やがてアクアヴィテは、スコットランド語(ゲール語)で「生命の水」を意味する「ウシュクベーハ」と呼ばれるようになりました。

やがて「ウスケボー」、「ウスケー」となり、18世紀後半ごろに英語化して「ウイスキー」となりました。
かつてのウシュクベーハは、蒸留しただけで飲まれており、樽での熟成が行われていませんでした。
そのため、独特の芳香も無く色も透明で、今のウイスキーとは大きく異なるものでした。

15世紀ごろのウイスキーは、スコットランドの修道院で造られているものでしたが、16世紀の宗教改革による修道院の解散によって、民間で広く造られるようになりました。
17世紀に入ると、スコットランドがイングランドに併合されたことで、ウイスキーへの課税が重くなり、密造されることが多くなりました。
18世紀には、イングランドへの独立戦争である「ジャコバイトの叛乱」が鎮圧され、統治が強化されたことによって、北方のハイランド地方での密造が一層盛んになりました。
政府から隠れるように密造したことで、ありあわせの材料で造られるようになりました。

その結果、大麦をピート(草炭)で燻蒸し、小規模のポットスチル(蒸気釜)で蒸留し、シェリー樽で熟成させるようになり、現在のウイスキー造りのスタイルが確立されたのです。


そして、ウイスキーの密造が終わったのは、19世紀の酒税法改正の時でした。
1824年には政府公認のウイスキーの蒸留所として、現在まで続くグレンリベット蒸留所が造られました。
それから1世紀ほどの間に、英国のみならず北米や日本でも造られるようになり、世界中で愛飲される蒸留酒となりました。

モルト+グレーン=ブレンデッド

Laphroaig Whisky Distillery

ウイスキーは、製造の手法によっていくつかの種類に分類できます。


【モルト・ウイスキー】
主に大麦から作られる造られるウイスキーです。
一つの蒸留所で造られ、他のものとブレンドしないものは「シングル・モルト」と呼ばれます。
個性の強いものが多く、その大部分に蒸留所の名前が付けられており、スコットランドの「グレンモーレンジ」や日本の「山崎」などがこれにあたります。
対して、複数の蒸留所の原酒を混ぜたものは「ブレンデッド・モルト」と区分されますが、こちらはあまりアピールされることはありません。
また、「シングル・モルト」の中でも一つの樽からボトリングされたものは「シングル・カスク」と呼ばれ、多くが限定品などの特別なウイスキーになります。


【グレーン・ウイスキー】
トウモロコシやライ麦から造られるウイスキーです。
製法自体はモルト・ウイスキーと変わりありません。
元々は、ウイスキーを安価に造るための代替品であり、没個性的なものとされていました。
個性の強いモルト・ウイスキーが「声高なスピリッツ」と呼ばれるのに対して「寡黙なスピリッツ」と呼ばれます。
これもスコットランドで生まれたものですが、今では北米のウイスキーの主流のスタイルとなっています。
また、単品ではなく、モルト・ウイスキーとブレンドすることで真価を発揮します。


【ブレンデッド・ウイスキー】
モルト・ウイスキーをベースに、グレーン・ウイスキーをブレンドしたものです。
数十種類もの原酒を用いることで、繊細で奥深い風味が作り上げられています。
英国が輸出するウイスキーの9割前後が、このブレンデッド・ウイスキーとなります。

5大ウイスキー

英国のウイスキー

ジョニー・ウォーカー

【スコッチ・ウイスキー】
スコットランド地方のウイスキーで、ウイスキーの代表格です。
原野に堆積するピート(草炭)で燻蒸し、ピートの成分を含有する仕込水を加水するため、独特の芳香が特徴です。
有名な銘柄は、ジョニー・ウォーカーグレンモーレンジバランタインなどがあります。


【アイリッシュ・ウイスキー】
アイルランド地方のウイスキーで、しばしばスコッチ・ウイスキーと比較されます。
大麦だけでなく、ライ麦や小麦も用います。
燻蒸にピートを用いず、蒸留も2回ではなく3回行われるため、軽く柔らかい風味が特徴です。
また、一般にウイスキーの綴りは「whisky」ですが、アイリッシュ・ウイスキーは「whiskey」と表記されることが多くなっています。
これは、19世紀にアイルランドの業者が、スコッチ・ウイスキーとの差別化を図るために綴りを変えると宣言したことに由来します。

北米のウイスキー

I.W.ハーパー

【アメリカン・ウイスキー】
アメリカには、ケンタッキー州バーボンで造られる「バーボン・ウイスキー」があります。
トウモロコシを原料とし、オーク樽で熟成させるという手法で造られます
ブラントンI.W.ハーパーなどがあります。
また、テネシー州で造られるものは「テネシー・ウイスキー」とも呼ばれます。
バーボン・ウイスキーとの違いは、原酒をサトウカエデの炭で濾過してから樽で熟成させることです。
こちらはジャック・ダニエルなどが代表です。


【カナディアン・ウイスキー】
カナダのウイスキーで、ライ麦を使ったものが多くなっています。
ライ麦から造られたグレーン・ウイスキーをブレンドしたものが大部分で、他の地域のウイスキーと比べ主張の抑えられた味わいとなっています。
アメリカの禁酒法時代に、アメリカに密輸することで発展したという経緯があります。

日本のウイスキー

ウイスキーの楽しみ方

【ジャパニーズ・ウイスキー】
20世紀から造られるようになったウイスキーで、元はスコッチ・ウイスキーのスタイルで造られていました。
サントリー創業者の鳥井信治郎と、ニッカウヰスキー創業者の竹鶴政孝の二人によって確立されました。
第二次世界大戦後は高い評価を受けるようになり、本場のスコッチ・ウイスキーを凌ぐ評価を受けるようになりました。


スコットランドでは、多数の蒸留所の原酒を、専門のブレンダーが個別の銘柄で纏め上げるというスタイルがとられていますが、日本では蒸留所も銘柄も同一の会社が保有しているという特徴があります。
そのため、全てを一括に管理することができ、高い品質を保つことに成功しています。


有名な銘柄としては、サントリーの「山崎」や「響」、ニッカの「竹鶴」などがあります。

ブログでの話題

PAGETOP△